【師匠便り】令和3年1月20日

「懸念していたこと」

すわん江戸村、劇団紀州のファンの皆さま、朝ふとんから出るのがつらい季節かと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。

 

現在、江戸村での公演は休演中です。和歌山県の提示する感染拡大予防のガイドラインを遵守し、三密を避ける行動をとりながら営業しておりましたが、はるばる海南の片田舎に来て頂いたお客様に対して、「密になりますのでお帰り下さい」という非人間的なこともできず、つい、密集された空間になりがちで、100%遵守しているとは言い難い状況の中、「もし当劇場にて感染者が出てしまったら?」という不安もあり、幕を閉めさせていただいております。

  

しかしながら、私が懸念していたことが現実のものとなってしまいました。

先日、関西の大衆演劇の劇団で集団感染が起こり、大変な騒ぎとなっていると聞いております。

現在、いつどこで誰が、感染者となり、周囲に感染させてしまう、またはされてしまうかはわかりません。

  

つい最近も、確か長崎だったと記憶していますが、女性職員がコロナに感染し、その方が勤める職場の全職員が検査を受けることに。結果は幸い全員陰性。その一報と同僚からの温かい言葉に彼女は涙したというニュースを見ました。断片的にしかニュースを見ていないので、彼女の本心は分かりませんが、推察するに彼女の涙はおそらく、自分が感染してしまい同僚たちが「濃厚接触者」となってしまったことへの罪悪感、全員陰性だったという安心感、そして同僚たちからの優しさに涙したのだと思います。

  

私は、舞台に青春をかける子たちが、劇団員やお客様に感染させてしまう。そしてそうなった時に、その子の体や感染した方の体もさることながら、感染した人に対して、心ない人からの誹謗中傷、不当な差別的言動を受けてしまう。その逆もしかりです。その時のことを考えると、100%の対策がとれない状況ならば、少しの間休演したほうが得策なのではないかと考えます。

  

今回の緊急事態宣言に基づく補償は飲食業界が主で、政府も我々のほうに目をむけてくれればありがたいとは思いますが、つらい思いをしているのは皆同じです。確かに、エンターテインメントというものは不急なものかもしれません。しかしお客様からの「早く観たい」という切なる声を毎日聞くたびに、エンターテインメントはなくてはならない必要なものだと思います。

  

皆で心を一つにし、新型コロナウイルス感染症に立ち向かっていきましょう。

芝居の台詞を借りるなら、

『蔵の財より身の財、身の財より心の財、心に勝る宝はなし。』

令和3年1月20日

市川昇次郎